【企業評価】不二製油グループ(2607)〜主婦の味方・大豆肉などESG投資で注目〜

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 今回は私が主婦(かつスイーツ作りが好き)ということもあり、よく台所の仕事でお世話になる不二精油Gを取り上げます。不二精油は食品油脂など食品素材加工の会社ですが、2015年には不二精油グループ(2607)が持ち株会社となり、不二製油株式会社はその傘下にある事業会社となりました。ということで、グループ会社ですが、説明は主力の不二製油の事業、植物性油脂、業務用チョコレート、乳化発酵素材、大豆加工素材について紹介していきます。

 ちなみに、素晴らしい会社には違いないのですが、株価的には下降傾向でして、短期目線(今後1年程度)では、私としては「中立」という評価です(2021年5月時点)。

 さて、それでは以下、ご覧ください。

目次

概要・沿革

 創業は1950年ですが、実はもともと4年間ほど「不二蚕糸」として事業を行うも不振。結局、独自の搾油事業での独立を図っていた大阪工場が、伊藤忠商事の出資を経て、1950年に「不二製油」が誕生します。不二製油は当時国内の製油メーカーとしては後発組で、一般的な大豆油、ナタネ油は既に主要企業が抑えた後(また戦後の食糧統制のために原料の割当が受けられなかった)だったため、南方系固形脂であるパームやヤシの製油にチャレンジ。競合他社と別路線を進んだ事が吉とでて、1954年に日本初のパーム核油の抽出に成功しています。

 1955年にはハードバターである「メラノバター」を発売。当時、チョコレート用油脂には、ココアバターの一択という定説を覆し、更にココアバターが抱える欠点の「ファットブルーム」(※)まで克服したハードバターとなり、チョコレートの原料として市場に一石を投じました。

※ファットブルーム:ファット(油脂)であるチョコレートの部分のココアバターが温度の上昇で溶け出しチョコレートの表面に白い結晶として浮き出ること。香りがなくなり食感も悪くなる。

 また将来的な貴重な食糧源としてタンパク質に注目。1956年から大豆ミートの開発に取り組んでいましたが、1966年に脱脂大豆の利用を開発する中で、高いたんぱく質含有量が期待できる分離大豆たん白のゲル形成法を確立し、世界10ヶ国で特許を取得しました。とはいえ、その後も大豆ミートの商品を開発しては、うまくいかなかったようです(大豆臭さが抜けない等)。ただ、ここ最近の大豆ミートの商品は本物の肉と遜色がないようです。

 1978年には東証第一部に上場。1988年にはティラミスの原料となるマルカルポーネチーズの代替品となる「マスカポーネ」を開発。当時日本で知られていなかったティラミスの一大ブームを巻き起こしました。 このあたりの努力は2021年2月のカンブリア宮殿でも取り上げられていますので興味ある方は検索してみてください。

マスカポーネ1kg

 2012年にはUSS製法(Ultra Soy Separation)を開発。大豆を分離する世界初の特許製法となりました。これは何かというと、大豆を油分の多い水溶分と油分の多いクリーム部分に分けるもので、例えば牛乳でいうと低脂肪牛乳と生クリーム部分に分離するイメージです。大豆中の成分は強い結びつきがあるため、開発は困難を極めたそうですが、半世紀以上の研究努力によってUSS製法が開発され、大豆を低脂肪豆乳と豆乳クリームに分離できるようになりました。これにより一層大豆を素材の良さを保ったまま消費できることになります。

 2015年には、不二製油がグループ制度に移行。また不二製油グループ憲法を制定し、ESGや人権等への配慮を明文化。同年、ESG委員会を取締役会の諮問委員会として設置し、単なる利益追求の姿勢だけではなく、社会全体の利益を見据えた理念が見て取れます

 また、この2010年代は、チョコレート分野での世界展開に力を入れ、ブラジルのチョコレート最大手Haraldを買収(2015)。この他、チョコで世界第3位の米国Bloomer(2018)、マレーシアのGCBスペシャリティチョコレート(2016)、オーストラリアのインダストリアル・フード・サービシズ(2018)等の買収・子会社化で積極的なM&Aを展開。2021年現在、連結で従業員約5800人、世界14カ国で展開する食品分野の一大企業となっています。

主要業務

 不二製油グループの売上高・営業利益から、事業を紐解いていきましょう。2020年3月期決算の資料から抜粋しますと、売上高4147億円、営業利益236億円、純利益163億円となっています(ただし、一部グループ会社が2019年決算を15ヶ月決算としている関係で、少し大きくなった数字なので御注意)

売上高営業利益経常利益当期純利益一株利益
2019年3月期300,84418,52518,17611,582134.75
2020年3月期414,72723,59822,35916,375190.51
2021年3月期(予)360,00016,50015,30010,000116.33
不二製油グループIR資料、単位:百万円(一株利益のみ円)

植物性油脂事業

 植物性油脂の売上高は全体の27.5%ですが、実は営業利益は112億円と営業利益構成比トップ41%を占める中核事業です。主なものはパーム油、パーム核油を原料とした食品加工油脂、食品油、チョコレート用油脂を展開。チョコレート用油脂では世界トップ3社の一角を占めます。

業務用チョコレート事業

 業務用チョコレートは売上高の構成費トップとなる43%を占める中核事業の一つです。製菓用、製パン用、アイス用などの多様な業務用チョコレート製造販売を行っており、日本ではトップシェア。世界でも第3位のシェアを誇ります(これは2010年代後半の米ブラマー、ブラジルのハラルドの買収等で販売網を多く囲い込めたのがシェアを押し上げた大きな要因です)。

乳化・発酵素材事業

 クリームやマーガリン、フィリング、チーズ風味素材などを展開しています。中国ではフィリングのシェアは第1位のようです。

大豆加工素材事業

 売上高354億円と、売上高全体から見ると10%に満たない数値ですが、営業利益か40億円と、この業界では比較的高めの利益率を誇っています。主に大豆タンパク素材、大豆タンパク食品を展開しており、大豆タンパク素材では国内首位、水溶性大豆多糖類では世界首位となっています。水溶性〜については何だそりゃ、と思うと思いますが、オカラから抽出した水溶性の繊維で、乳製品や麺類など様々な商品に活用されています。 

 植物性油脂&業務用チョコレートが中核事業と上述しましたが、現在不二製油Gでは、この大豆加工の事業を第3の柱事業とするべく努力しているところです。

社長交代

 4月1日付で不二製油グループの社長が交代となり、前社長の清水氏は相談役として残ることになりました。清水社長は1977年の入社以降、大豆タンパク事業に力を注いできた熱い方らしいですが、引き続き大豆ミート事業には関っていくのでしょう。赤いネクタイが印象的でした。

 さて新社長となる酒井氏は不二製油Gの子会社の米ブラマー会長からの就任となります。新型コロナの影響もあって減益となっている逆境からのスタートとなりますが、頑張ってもらいたいものです。

株価展望

 現状の株価を見ていきましょう。現在(5/10)時点の株価は2,842円。信用倍率は1倍前後で推移しています。以下は日足チャートですが、見ればわかるとおり、短期的には下落傾向にあり、昨年12月につけた2,774円が一つの節目になっています。決算資料等を見るに、新型コロナ以降、外食需要低迷により外食産業は打撃を受けたものの、一方で自宅での消費が見込まれる商品の売れ行きが好調な事もあり、今すぐ死ぬような状況ではありませんが、昨年11月に期初の予想を減収減益の下方修正(売上高3700億円→3600億円、営業利益193億円→165億円、純利益115億円→100億円)してから大幅下落。

 また本年2月に国内証券が、パーム油価格の高騰を受けて、レーティングを下げた事もあり、しばらく下落基調となっています。そんな不二精油Gは5月11日に通期決算の発表を予定しています。2020年度決算はもうサプライズはないでしょうが(四季報予想は会社予想と同じ)、注目は来期予想に移っており、ここで更なる減益予想が出ると、昨年12月の安値を更新する展開もあり得るでしょう。

 筆者の予想ですが、2022年予想は当期純利益110億円程度と予想します(今期純利益が100億円なので前期比10%増)。この場合は、一株利益は125円前後となるので、直近数年のPER平均が22倍くらいですから、理論的な適正株価は2763円となります。素敵なシナリオを描くのであれば、実は不二製油Gは利益剰余金がそこそこ(1500億円くらい)ありますから、自社株買いなり増配に加え優待ももっと充実させてくれたら、株価は底入れで上昇が期待できるでしょう(お花畑シナリオですが)。

 さて、冗談はさておき、正直なところ最近は不二製油Gの業績よりもESG関連で注目がいってしまっているので、良い意味で期待を裏切ってくれればと思います。明日の決算発表、特に来期予想に注目です。

 それでは!

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