【企業評価】住友商事(8053)〜2021.3期は5大商社唯一の赤字/非鉄金属等の資源やインフラで強み〜

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 今回は日本の5大商社の一角、住友商事<8053>について解説します。別に株主でもないですが、身内や知り合いにも在勤者がおりますので、なかなか馴染みがあるので取り上げました。さて、住友商事といえば、大阪から始まった財閥系商社ですが、2021年3月期は日本の五大商社唯一の赤字決算となりました。マダガスカルのニッケル事業の操業停止など大きな特損を出してしまったのが要因です。それでは最初に筆者評価を書きつつ、会社を紹介します。

目次

筆者評価:C【上限1650円:8月まで】

※注:筆者評価はS>A>B>C>D>Eの6段階にしてます。現在株価に対しての割安感も考慮しての評価なので、赤字企業や現在業績が悪い企業でも、私の将来の期待値が高ければ必ずしも低い評価にしませんので念の為。

S+30%以上予想
A+15%以上予想
B+10%程度予想
C現状適正価格
D−10%程度予想
E−20%以上予想
   ※筆者の3ヶ月スパンの株価予想。

現状の株価や各指標は以下のとおりとなっています。

現在株価筆者目標PERPBR信用倍率利回り
1,5311,6508.4倍0.76倍3.74倍4.54%
           目標は筆者予想。2021.6.8株価。

 今回の企業紹介はちょっと趣向を変えて筆者の株価予想から述べますが、夏までの株価は上限1650円程度の予想です。上記のとおり現在がほぼ適正水準と考え保有はせず静観しています。まあ筆者の予想なぞ基本あたりませんが笑。下限ですが1400円台後半くらいでしょうかね。そこまで下がると配当利回りが高いのが意識されそうです。

 さて、住友商事を含め商社株はしばらくの間、PBR的にはかなり割安に放置されており五大商社のうち伊藤忠を除けばいずれも現時点の株価は、PBRが1倍を下回っています。一方で、2020年8月末、ウォーレン・バフェット氏が代表のバークシャー・ハサウェイ社傘下ナショナル・インデムニティーが日本の商社株の大量保有報告書を出して注目され、以降株価は上昇しました。発行株の保有比率は、5.04%のようです(ちなみに四季報の大株主リストに名前がないので、BNYメロンなどのカストディアン経由での保有?)。

 住友商事は21年3月期が赤字だったこともあり、他の商社より多少出遅れ感があると私は思っています。現在の株価1530円前後だと時価総額は1兆9千億円程度ですが、以下業績の欄で記載のとおり来期黒字化を見据えて(流石に二期連続赤はないと思います)、私の予想は以下のとおり直近3ヶ月程度の上限は1650円とします。仮に一株1650円になると、時価総額は2兆600億円程度となり、今の水準から約8.5%上昇です。まあ無理な水準ではないですね。でも丸紅に時価総額で抜かれそうな感じ。。。あとROA・ROEが低いのも気になります。5大商社で一番低いんじゃないのかしら。2021年5月に2021−2023年度の新中期計画「SHIFT 2023」を発表しており、2023年度にはROA 4%以上、ROE10%以上を達成ということなんで期待はしておきましょう。

 ちなみにここ数ヶ月の日足チャートは以下のとおりで、チャートには載っていませんが、直近の高値は3月29日の1651円、さらに遡ると2018年1月の2043円が高値となります。

 一応の好材料としては、2021年3月にアンバトビーのニッケル事業が操業を再開しました。昨年3月に操業停止だったので1年ぶりですね。ニッケルを含めたコモディティ価格は上昇基調にありLMEの価格は17600米ドル/トン近辺で、資源価格下落が懸念ではありますが、リチウム電池等で需要が継続することを考えると、ニッケル価格が急落するシナリオは直近はないでしょう。ただ、その他の要因で新たな減損計上をいきなり発表とかしそうで怖いんですけどね。。。。

 五大商社の直近3年程度のPER平均値は8.65倍程度なのですが、この数値と今期の住友商事会社予想の一株利益(184円/株)をベースにすると適正株価は1592円。うーん、まあ投資の判断は自己責任ということでご参考になさってください。

沿革・概要

 住友商事については、かなり長い歴史があり、会社HPによるとそのルーツは17世紀に住友政友(すみとも・まさとも)が京都に書林と薬舗を開いたことに始まるとのこと。その後、政友の娘婿が粗銅から銀を分離する精錬技術「南蛮吹き」を開発し、この技術を同業者に公開。その後銅の採掘にも進出し、幕府の許可を得て別子銅山を開坑しました。別子銅山は283年にわたって銅生産を続けました。ちなみに別子銅山は愛媛県新居浜市に位置していて、今は現地に別子銅山記念館があり、当時の貴重品等が展示されています。住友グループの礎となった銅山なので、興味のある方はぜひ行ってみてください。

 そんな住友グループですが、現在の住友商事が創立されたのは1919年(当時は大坂北港株式会社)。大坂北港地帯の造成と隣接地域開発、不動産経営が事業だったとのこと。その後名称変更や合併があって、1945年に上場を果たします。今や66カ国135拠点を持ち、連結対象会社は935社、約7万5千人を有する一大商社に上り詰めました。

 現在の住友商事の事業は主に6つで、金属、輸送機・建機、インフラ、メディア・デジタル、生活・不動産、資源・化学品に分かれています。以下解説していきます。

事業内容

 住友商事の事業は前述のとおり、①金属、②輸送機・建機、③インフラ、④メディア・デジタル、⑤生活・不動産、⑥資源・化学品に分類されます。

 ①金属事業は鋼材・鋼管・輸送機材などの金属製品取引、②輸送機・建機は、船舶・航空機・宇宙危機関連の取引や自動車・タイヤ関連取引、建設機械等のレンタル事業など、③インフラ事業では、国内電力小売、国内外の再エネ事業、電力EPC(EPCとは簡単に言うと設計・調達・建設の請負)、物流・港湾事業、④メディア・デジタルはケーブルテレビ(柱はJ:COM)や5G、ICT、情報通信インフラ、⑤生活・不動産では、スーパー、薬局などのリテイルや生鮮流通・加工に加え、穀物・油脂等の原料事業、⑥資源・化学品は石炭、鉄鉱石、非鉄金属、ウラン、石油関連事業等々、、、となっています。

 割と損益の比率が高めなのは、インフラと資源・化学品の分野で、会社発表の当期純利益・損失の直近の実績は以下のとおりです。色付きが前期(2020年会計年度)の実績で、2021、2022年は今後の予想&計画の数値となります。

201920202021予2022計
金属▲504356130210
輸送機・建機305▲175250530
インフラ615▲556320370
メディア
デジタル
383443390410
生活・不動産513▲84480560
資源・化学品432▲6371,050690
※住友商事決算参考資料から。単位は億円。

 見れば一目でわかるのですが今期はメディアを除けば全て赤字となっており、特に資源分野の一過性の損失が響きました。最も大きいのは、マダガスカル🇲🇬のアンバトビーのニッケル案件で、新型コロナの影響での操業停止、ニッケル価格の長期価格の見通し下落、生産計画の見直しで、1Qで550億円、3Qで300億円の減損を計上しました。

 前期(2021.31)については、メディア・デジタル分野以外は全て赤字でしたが、今期は全セグメントで黒転を見込んでいます。今期はアンバトビーの他、オーストラリア発電事業、インドネシア自動車金融など、いくつかの一過性要因による減損処理を行ったので、膿を出し切ったと期待しています。

(とはいえ、先日発表したエチオピアの携帯電話事業参入とか、ホントにいい案件なのか、?と思った案件もなくはないですが。。。)

直近業績

 それでは会社の直近数年の業績について売上・経常利益等を見ていきましょう。会社発表によると以下のような感じです。2022年と2023年の数値は会社の中期計画から引っ張っています。

 株価に影響する今期業績予想ですが、会社発表は当期純利益2300億円となっており、余程の事がない限り黒字転換はするでしょう。現段階ではQUICKコンセンサスが2301億円とほぼアナリスト予想と同じです。会社予想は多少慎重な数字だと信じて今後の3Qあたりでの上方修正に期待したいですが、まずは2022.3月期1Qの決算発表に注目ですね。(あと株主総会が6月18日にあります)

売上高営業益経常利益純利益一株利益
2015.385,9661137▲185▲731▲58円
2016.340,180140174560円
2017.339,97021311709137円
2018.348,27341233085247円
2019.353,39240403205256円
2020.352,99825191713137円
2021.346,450▲942▲1530▲122円
2022.32300184円
2023.3中計2600
2024.3中計3000?
         住友商事IR資料、単位:億円(一株利益のみ円)。

 筆者は1400円台後半か1500円前半くらいに株価が振れるようなら、そこで参入を考えたいと思います。いずれにせよ投資は自己責任で!

 それでは!

 

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