【小型企業解説】アライドアーキテクツ(6081)~マーケティングDX支援。苦難の時期を乗り越え成長軌道へ~

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 時価総額が1000億円を超えるような企業だと、プロの機関投資家もしっかりとチェックしているでしょうが、時価総額が300億円以下となると、なかなか目も届かないでしょう。何より流動性も小さいため、機関投資家が参入するときに、何日にも分けてチマチマと売買していかないと、株価が暴騰・急落する恐れがあります。ということで、今回はプロの目が届きにくい、小型企業解説の第1弾として、マーケティングDX支援を行うアライドアーキテクツ<6081>を紹介したいと思います。小型っていくら?と思いますが、勝手に時価総額で300億円以下くらいを想定してます。

目次

沿革・概要

 アライドアーキテクツは2005年にインターネットを通じたマーケティング事業を目的として設立されました。当時はちょうどインターネット利用が爆発的に増えた2000年代ということで、時代を見越した事業ですね。最初の大きな事業は2006年8月の「aafactory.jp」の開発で、企業HPやビジネスのブログのデザイン・システム開発などをワンストップで請負いました。2008年には「モニタープラザ」(現在のモニプラファンブログ)を立ち上げ、若い女性をメインに消費者間の商品の口コミ&シェアを行うプラットフォームができました。今でこそ当たり前ですが、当時から「個人が商品PRの発信者になれる」ことを掴んでいた着眼点が素晴らしいですね。

 そんなこんなで2013年にはマザーズ上場。上場当時のIPO銘柄の中では非常に評価が高く、公募価格1700円に対して初値3900円と非常に人気でした(当時から第三者割当増資&3分割をやっているので単純比較はできませんが、今の株価は少し低いですね)。

 2015年に海外SaaS事業のCreadits(本社シンガポール)を設立。同社はデジタル広告にあたってクリエイターネットワークとAIを活用するプラットフォームを開発・運営しており,米国IBMやPayPal社など多くの企業に導入されているようです。その他関連会社として、Vster Japan(連結子会社)、AiCON TOKYO(連結子会社)、ファンベースカンパニー(持分法適用関連会社)、ネクストバッターズサークル(今年4月設立)などを設立。

 以下の事業概要で説明しますが,マーケティングDX支援の「Letro」や「echoes」など様々なツールを提供し、特に2020年12月期4Qでは、海外子会社のCreaditsが黒字化したことも注目されました。会社の決算説明等では,投資期間が終わって,これから投資回収期に入ると中村社長が述べています。

 今や海外拠点が6つもあり、グループでの従業員数は約200名と大きな会社となりました。が,まだまだ時価総額100億円以下と成長余力十分です。そんなアライドアーキテクツの事業内容を簡単に以下見ていきます。 

A financial data analysis graph. Selective focus. Horizontal composition with copy space.

事業内容 

 ざっくり分けると事業はSaas事業ソリューション事業に分かれます。ちなみに「Saas」とは何ぞや?という方もいると思うですが、「Software as a Service」の頭文字で「サース」と読みます。今後解説ページでも作ろうと思いますが、クラウドサービスの一つで、要約すると、今までダウンロードとかしていたソフトウェアをネット上で提供・利用・データ保存するようなサービスです。これによって複数人がアクセス・共有・編集ができるようになります。

 ソリューション事業ではファンの育成や,デジタル人材シェアなどを行っています。以下詳しく見ていきましょう。なお、数字については2020年12月期4Qの数字を使っています。

Saas事業(旧マーケティング・ソフトウェア事業)

 アライドアーキテクツの粗利売上の約4割を占めるのがSaaS事業で、ここが根幹です。「Letro」や「Monipla」を通じUGC(User Generated Contents:消費者が作成した写真・動画・レビュー投稿などのコンテンツ)を活用したEC、「echoes」を通じSNSプロモーションによるデジタル販促「LetroStudio」による動画制作の3領域です。会社資料によると、2020年の実績では768社がSaaS事業を活用し、1年間の平均顧客単価は77万円とのこと。特に2020年3Q以降案件が増加し、直近では更に勢いがついています。

海外Saas事業(旧クリエイティブ・プラットフォーム事業)

 粗利売上の約16%前後を占め、海外子会社Creaditsによる広告制作依頼がメイン事業です。会社資料では、特に欧米のゲーム・アプリ業界が顧客企業のようですが、Creaditsのもつ世界のデザイナーネットワークを活用し、高品質な広告を手がけているようです。2020年12月期は、各四半期毎に順調に伸ばしています。特に3D動画の需要が高まっているようでゲーム業界の受注が増加しているとのこと。

ソリューション事業(旧マーケティング・ソリューション事業)

 粗利売上の約28%です。会社資料によれば「SNS」と「ファン」がキーワードとのこと。子会社のファンベースでは、新しいマーケティング理論「ファンベース」(※ファンを大切にし、ファンをベースにして売上や事業価値を高める考え方)を使った分析・企画支援。今年4月設立の子会社ネクスト・バッターズ・サークルではマーケティング人材のシェアリング事業、またAiCON TOKYOでは、クリエイティブ・ディレクターのシェアリング事業を行っています。なお、2020年は2Qの緊急事態宣言でSNS広告が落ち、ソリューション事業の粗利売上が落ちたものの、その後は順調に回復しているようです。

中国進出支援事業(旧クロスボーダー事業)

 これから来る!セグメントはこの事業、中国進出支援事業です。前はクロスボーダー事業と呼ばれてましたが、中国へ力を入れています。日本企業とタッグを組んで、有名なインフルエンサーを活躍し、中国の有名なSNSで商品を拡散しており、例えばWeibo、WeChat、Bilibiliなどを経由した商品PRを展開しています。また在日中国人コミュニティ「BoJapan」も活用しています。このセグメントは粗利売上では10%程度しか占めていませんが、中国の需要はまだまだ伸びていますから、期待ができます。他方競合のライバルが増えてきているのが懸念ではありますが、インバウンド需要が落ち込んでいる中でも、海外旅行に行けない分、中国への越境ECは好調ですから、頑張ってもらいたいです。

業績内容

 それでは過去の決算資料を見ていきましょう。上場前のデータは少し遡り過ぎでしょうか汗。

 2017年以降は何回か下方修正を出しており、多分この時期の投資家には良いイメージないでしょう。本当に忍耐の時期でした。

売上高営業利益経常利益純利益一株利益
2012年12月期1,07416316313438.11
2013年12月期1,70232430519351.99
2014年12月期2,16322021911927.96
2015年12月期2,583▲345▲365▲418▲97.32
2016年12月期6,00430428324556.50
2017年12月期5,606▲57▲150▲1▲0.12
2018年12月期4,088▲14▲251▲369▲26.42
2019年12月期4,087▲157▲192▲281▲20.08
2020年12月期4,19229823117312.35
2021年12月期(予)4,62040034021014.90
2021年12月期(予)5,12052050032022.71
アライドアーキテクツIR資料、単位:百万円(一株利益のみ円)。2021.5/12上方修正赤字

 そんな中、コロナの影響をもろともせず、昨年11月の上方修正(営業利益1.1億→2.3億円)は驚きを持って受け止められ、ストップ高。そして本年2月の本決算発表で更に上方修正(2.3億円→2.98億円)と、良い意味でサプライズになりました。会社説明では、一番大きな要因は赤字続きだったCreaditsの黒字化が大きいようです。

 また、事業内容が新型コロナの影響を受けにくい、というかセグメントによっては追い風になったのも大きいでしょう。私は新型コロナが、我々の時代を5年くらい早めてくれた印象を持っていますが、すなわち時代を先取りしていたアライドアーキテクツの時代が少し早く来て、一気に成長期流に乗った印象を持っています。

展望

 さて、5月12日の引け後に、21年12月期第1四半期決算を出すと共に、通期予想を上方修正しました。まあ上方修正すること自体は恐らく皆さん想定していたと思いますが、緊急事態宣言再開したこともあって、1Qの段階ですぐ修正というのは少なくとも私は予想してませんでした。というのも、期初予想の営業利益は通期4.0億円で、実際には1Qで2.18億円と進捗率50%超え。純利益ベースでは通期2.1億円予想に対し、1Qで2.53億と、1Qで通期予想超えてきました。良い意味で目を疑いますね。

売上高営業利益経常利益純利益一株利益
2021年1Q決算1,61121827925318.94
2021年通期(予)5,12052050032022.71
2021.5/12第1四半期決算短信から

 さて、素敵な上方修正ではありましたが、業績にコロナの影響なし(むしろ追い風)であることを考えると、恐らく年内にもう一度上方修正してくるでしょう。

 またアライドアーキテクツは中期テーマとして「マーケティングDX支援企業として圧倒的ポジションの確立」を挙げており、今期2021年12月期は、テーマ達成の第1ステージとのこと。デジタル改革関連法案も国会を通過し、9月にデジタル庁発足ですから、DX気流に乗って業績の拡大を期待です。

 さて、現在の株価は682円、時価総額は96億円です。通期予想が修正されたため、仮にここからPER40倍前後まで株価が上がるなら、理論株価は908円前後。ここに、お花畑シナリオで、最終的に通期で営業利益7.0億、純利益5.0億円(=一株利益35.4円くらい)と想定すると、PER40倍なら株価は1416円となり、昨年からだとテンバガー達成です。夢が広がりますね。

 そういえば、話は逸れますが、主要株主の6番目に元お笑い芸人で、Zeppy代表の井村俊哉さんが入ってますね(持ち株比率1.99%。28万株ほど)。中小企業に目を配る個人投資家の注目も集まってきそうです。

 それでは!

(今後随時改訂しますが御容赦ください)

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