【用語解説】「株主配当」「株主優待」とは?

解説

 証券会社を通じて、ある会社の株式を取得すると、株主名簿に登録され「株主」となります。株主になると、その会社から配当金や株主優待をもらうことがあります。これらは、一体どういうものなのか、以下で解説していきます。

株主配当・配当金

 株式会社は、その事業活動や投資活動で生み出した利益を将来に向けて貯めたり(内部留保)、従業員に還元したりしますが、これに加えてこの利益を出資してくれた株主に配分します。これを株主配当とか配当金と言ったりします。配当金の分配は通常出資比率(保有比率)に応じて分配されます。まあ、簡単に言うと多く株を保有するほど多く配当金がもらえるというわけですね。

 ただ、赤字の企業も配当金を出さないといけないわけではありません。普通は配当金というのは会社の利益を原資としますので、業績がよくなれば「増配」し前年より配当金が増えたり、業績が悪くなったら「減配」といって配当金が減ります。また、赤字転落や大きな損失が発生して、配当金がなくなる「無配」や、無配から配当が復活すると「復配」と言ったりします。また、会社によっては、●●周年といった節目のタイミングで特別な配当金「記念配」を出すこともあります。

 配当金の金額は、会社によってマチマチです。利益のうちどのくらいの比率を配当に振り分けているかを示す数値を「配当性向」と言いますが、東証1部の企業でしたら、この配当性向は25〜30%くらいが一つの目安です。つまり、一株利益が100円の会社なら、25〜30円の配当金がもらえるラインですね。一般の投資家目線では配当性向よりも、株価に対する利回りのほうを気にすると思いますが、筆者の肌感覚的には利回り3%以上なら割と高め、2%台ならまずまず、といったところです。ただし、利回りが低くても、その分設備投資などに回している場合もあるので配当利回りのみでは売買の決定要因にはなりません。特に会社の成長を優先するJASDAQやマザーズの新興市場は将来の投資を優先して無配の会社も多いです。そのため、銘柄を選ぶにしても自分が重視するのはキャピタルゲイン(値上がり益)なのか、インカムゲイン(配当益)なのか、で考えると良いでしょう。

 ちなみに配当金受け取りの権利が発生するタイミングですが、例えば2021年3月期決算の会社でしたら、3月29日の権利付き最終日(権利確定日とも)の大引け時点(要はその日の市場が閉まるまで)で保有していれば、権利が発生します。翌日30日は権利落ち日といって、この日に株を取得しても配当金の受け取り権利は発生しません。なお権利落ち日は、一株あたり配当分の価値が下がるので、株価が下がりやすいです。

 実際の配当金の受け取りタイミングについては、年に1回の期末配当のみとしているところもあれば、年2回で中間配当&期末配当としている会社もあります。一括で期末配当する企業だと、3月決算の会社でしたら、6月頃に株主総会で決定して、6月下旬・7月頭くらいに振り込まれるのが一般的です。配当金の受け取り方法は証券会社によって異なりますが、①証券会社の口座への振り込み(株式数比例配分方式)、②銀行口座への振り込み、③郵便局等での受け取りがあり、①か②が多分一般的ではないかと思います。

 ちなみに以前は配当金は株主総会の決議で決定されるものでしたが、2006年の会社法では、会社の定款で定められていれば利益の処分は取締役会で決めることができます。

株主優待

 株主優待は必ずしも全ての会社が行っているわけでもなく、しかも世界的には一般的ではないですが、会社が株主に対するPRや還元、株主の増加を目的として自社製品やクオカードなどを配布することがあり、これを株主優待といいます。権利確定日に会社が定めた一定の株数を保有してもらえれば、もらうことができます。

 この株主優待ですが、各企業が独自色を打ち出していますので、ラインナップも様々です。例えば食品メーカーなどは自社製品を提供しているのが一般的で、他にも自社製品の割引券などがありますが、直接消費者に商品を提供するのが難しいBtoB企業などは、お米券やビール券といった商品券やクオカードで対応していたりします。

 個人投資家の中には、この株主優待を重視して銘柄選定を行う方もいますし、株主優待で生活する強者もいます。聞いたことがあるかもしれませんが、(多分)現在一番有名な優待投資家なのは桐谷広人さん(元プロの将棋棋士)でしょう。ZAIなどの有名雑誌にもよく出る他、一時期は月曜夜の「月曜から夜更かし」(日本テレビ)でもよく出演していました(最近見ていないですが)。

 さて、この株主優待ですが直近は風向きが怪しいです。というのも、新型コロナウイルスの影響もあり、コストの削減等で廃止の動きがあり、特に(優待の有効活用が難しい)海外投資家を中心に、クオカードや自社の製品なんぞよりも配当金で株主還元を行うべし、という考え方が強くなってきた風潮があるため、廃止する動きが高まっています。個人でも、クオカードや金券もらっても、金券ショップに駆け込む方もいますから、お金で返してもらった方が普遍的に株主還元が見込めて良いかもしれませんね。

 もう一つ株主優待を廃止する動きで注意しておく事項があります。もともとこの株主優待を設定する企業側の意図の一つに株主数を増やすことがありました。このため保有数が少ない株主でも優待を得られるよう設定し、個人投資家に投資の間口を広げています。例えば先日記事を載せたANAの優待について以下の保有数と優待内容を見てみましょう。ANAの権利確定日は3月末と9月末で、株式保有者に対し国内線片道一区間優待割引運賃が適用できる優待券を配布しています(他にも提携ホテルの割引券やカレンダーなどがありますがここでは割愛)。

100株以上1枚
200株以上2枚
300株以上3枚
400株以上4枚+超過分は200株毎に1枚
1000株以上7枚+超過分は400株毎に1枚
100,000株以上254+超過分は800株毎に1枚
                   ANA会社HPより

 見てもらえればわかるとおり、一人で多くの株式を保有するよりも、例えば家族で別々に口座を持って株式を保有したほうが、優待が多くもらえそうなことはわかりますね。ところが、昨年の東証一部指定の要件基準変更で、株主数の基準が2200人→800人になり、2022年4月に運営されるプライム市場(今の東証一部)でも同様に株主数基準が800人となっています。ここでプライム市場にカテゴライズされるような大企業にとっては800人という数字はそれほどの数ではなく、株主数を増やすために頑張って優待を維持する必要性が少なく、廃止の動きが加速するかもしれません。

 個人的には会社のロゴが入っている製品・クオカードはちょっと特別感があって好きなのですが、(特に)海外投資家としては、そんなものより配当で還元せいというスタンスでしょうから、優待廃止の流れが続くのではないでしょうか。今年4月に出た日経新聞の報道によると、2020年度に優待を廃止した企業は75社(※新設が49社)だそうで、ちょっと注意が必要かもしれません。永続的なものではなく業績次第では突然に優待廃止!だなんてこともあるのでご注意を。

 そんな株主優待ですが、私は子どもがいるので、外食関係は重宝しています。コロナの関係で今は外食企業の株はあまり保有していませんが、6月はマクドナルド<2702>やすかいらーく<3197>なんかがありますね。今月の権利付き最終日は6月28日までなので、御注意を。

 それでは!

 

 

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